B.LEAGUE PREMIER時代に備えよ!「サラリーキャップ制」は選手にとっての天国か、地獄か?

皆さん、こんにちは!バスケットボール選手のキャリアサポーター、SEISのミツです。

「サラリーキャップ」

この言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?

NBAのファンなら、「レブロンの年俸すごいな」とか「〇〇選手はサラリーキャップのせいで移籍できへんのか…」といったニュースを思い出すかもしれません。しかし、この「サラリーキャップ制」が、いよいよBリーグの最高峰、B.LEAGUE PREMIER(以下Bプレミア)で導入されることが決まりました。

この制度は、プロバスケットボール選手である皆さんにとって、一体どんな影響を与えるのでしょうか?

今回は、元アスリート、そしてJリーグ入りを目指すサッカークラブの営業部長として、数々の契約交渉の裏側を見てきた私が、このサラリーキャップ制を、選手目線で分かりやすく、でも専門的に解説していきます。

結論から言います。

サラリーキャップ制は、リーグの健全な成長を促す一方、選手にとっては「天国にも地獄にもなりうる」制度です(地獄は言いすぎかな笑)。

1. Bプレミアが目指す「健全経営と戦力均衡」

ほとんどのスポーツで、人件費はチーム成績に比例するという統計データがあるように、Bリーグでもこれまでは明らかにチーム力格差が存在していましたが、経済的に強いチームがリーグをリードする形(人気・実力のあるチームがリーグを引っ張る形)で発展させることが重視され、チーム力の格差問題にはある程度目を瞑ってきたんだと思います。ただ、私はBリーグがここまで順調に発展し、選手のレベルもリーグと合わせるように向上してきたのは、このBリーグの戦略が成功した結果だと思っています。

そして、リーグの経済規模がある程度発展・強化されたことで、次はチーム力格差を埋めて競争力のあるリーグ作りに舵を切ったんですね。
昇格降格を廃止し、実力が拮抗した固定されたチームで争う、そういう方針となったのです。そのための施策がサラリーキャップ制度です。
個人的には、この昇格降格をなくしたクローズドなリーグにしたのはとてもいいと思っています!ファンが定着しますしバスケがより浸透していくと思います。例えば、JリーグでもJ3とかになるとまず全国ニュースで取り上げられることはないですし、選手もほぼ知らない…っていうことが多いです。しかし、クローズドなリーグであれば、スポーツニュースでも全チームが取り上げられることになりますし、よりバスケが浸透してく形になると思います!)

少し、話がずれましたので、元に戻しましょう。
先程も書きましたが、Bプレミアで導入されるサラリーキャップ制には、明確な目的があります。
それは、リーグ全体の競争力を高め、特定の資金力を持つチームだけが一人勝ちするのを防ぐことです。

  • チームの年俸総額: キャップ(上限)8億円、フロア(下限)5億円と定められています。

この制度により、クラブは資金力に左右されない健全なチーム運営が可能になります。リーグ全体が活性化すれば、選手の露出も増え、皆さんのキャリアにとってプラスになる側面は多いでしょう。

2.サラリーキャップ制がチームに与える「光と影」

Bプレミアではキャップ(上限)8億円、フロア(下限)5億円と定められています。

つまり選手の年俸総額が5億円を超えなければならず、8億円を超えてはならないというルールでしたよね。

これはお金にモノを言わせたチーム力強化ができなくなり、リーグ全体の競争力が向上し、よりスリリングなリーグになることが予想され、我々バスケファンからしたら、より魅力のあるリーグになるという期待感があります。

ただ…これをチーム目線で考えると少し事情が変わってきます。

昨シーズンのB1リーグのサラリー総額1位のチームは約12億円で、最下位のチームは約3億円でした(サラリー総額は予想です)。

ということは・・・
サラリー総額1位のチームは、2026シーズンに向けては年俸約4億円を削減しなければならず、最下位のチームは約2億円の追加が必要です。

今、スター選手ぞろいのチームは選手年俸を圧縮しなければならないので、選手の放出も視野に入れつつ、力を落とさないチーム編成が求められます。

そして、サラリー総額が5億円を下回っているチームは、ここから大きく年俸を増やさなければならりません。
健全経営で身の丈にあった年俸総額で運営してきたチームにとっては、大変だと思います。
私も大きくはないクラブで営業部長をしているので、この大変さは身に染みて分かります…きっと、今頃、営業さんたちは様々なスポンサー獲得に向けて必死で動いて資金確保に奔走していると思います。

ただ、このようなサラリーキャップ制でリーグが始まれば、チーム格差は小さくなりリーグの活性化、競争力向上が期待できます。

2. サラリーキャップ制が選手に与える「光と影」

リーグ全体にとってはプラスの側面が多いサラリーキャップ制ですが、選手一人ひとりのキャリアにとっては、良い面と悪い面の両方をもたらします。

影の側面:給与に反映されないジレンマと「ペナルティ」

プロ選手にとって、最高のパフォーマンスは、最高の報酬を得るためのモチベーションでもあります。
しかし、サラリーキャップ制は、この「活躍した分だけ給与に反映してほしい」という選手の想いと衝突する可能性があります。

  • 高額年俸の頭打ち:
    • チーム全体の年俸総額が決まっているため、一部の選手が莫大な年俸を独り占めすることは難しくなります。
    • もしチームが上限の8億円近くまで使っている場合、あなたがどれだけ素晴らしい活躍をしても、提示される年俸には限度があるかもしれません。
  • 「上限を超過したらどうなるの」⇒厳しい現実が待っている
    • サラリーキャップの超過に対しては、**「翌シーズンの勝ち数から15を減じる」「サラリーキャップ金額を超過した金額の5倍の制裁金」「降格」**といった、厳しいペナルティが課せられます。
    • ただし、選手が怪我でインジュアリーリスト入りし、代わりの選手を獲得した場合など、予期せぬ事情で選手の人件費が上限を超えてしまった場合は、そのクラブは超過した金額の50%または100%をリーグに支払うことで、本来科されるはずの降格、勝ち数減、制裁金(超過額の5倍)といった厳しいペナルティを免除されます
    • あり得る話
      • もしあなたがチームのエースで、監督に「俺、今シーズンめちゃくちゃ活躍したから、年俸3億円にしてくれ!」とお願いしたとします。
      • 監督は「いや、うちのチームはサラリーキャップが8億円までしかないんや。お前の年俸をそんなに上げたら、ペナルティで勝ち数が減って、降格してしまうんやで!」と即答するかもしれません。

光の側面:希望の光「スター選手条項」

しかし、Bプレミアのサラリーキャップ制には、選手の活躍を正当に評価するための「希望の光」も用意されています。それが**「スター選手条項」**です。

  • スター選手条項とは?:
    • 当該クラブのシーズン終了時点で、1.5億円以上のクラブ内最高額での契約となった選手1名を、サラリーキャップ制度においては1.5億円として計上するというルールです。
    • だから、NBAのバリバリのスーパースターを年俸50億円で獲ってもサラリーキャップ上は、年俸1.5億円で計算されるので、どこかのビッグクラブが取ってくれないかな…と思ってます。

この制度は、リーグが選手のモチベーションを保ちつつ、チームの健全性を守ろうとする姿勢の表れと言えます。
選手が活躍した分、正当な評価がなされるための仕組みが、とりあえずは用意されているのです。

3. サラリーキャップ時代を生き抜く「交渉術」と「代理人の役割」

サラリーキャップ制は、選手とチームの契約交渉に、新たな知恵と工夫を要求します。

1. 選手が知るべき「年俸以外の価値」

  • なぜ重要か: 年俸が頭打ちになっても、肖像権やイベント・メディア出演、引退後のキャリアサポートなど、交渉できる項目はたくさんあります。これらの条件をいかに引き出すかが、選手の価値を最大化する鍵となります。

2. サラリーキャップ時代の「代理人の腕の見せ所」

  • なぜ重要か: サラリーキャップ制下では、年俸交渉だけでなく、年俸以外の条件でいかに選手にとって有利な契約を結べるかが、代理人の腕の見せ所になります。
  • 専門的な知識: 代理人は、サラリーキャップのルールを深く理解し、その中で選手の価値を最大限に高めるための戦略を練る必要があります。
  • 選手への寄り添い: 選手が抱く「活躍したい、稼ぎたい」という気持ちと、チームの「健全に運営したい」という想いを両立させることが、代理人の重要な役割となります。

4. まとめ:サラリーキャップ制は、プロとしての「試金石」

いかがでしたでしょうか。

サラリーキャップ制は、選手にとって「活躍した分だけ給料に反映してほしい」という単純な想いだけでは立ち向かえない、複雑な制度です。

しかし、これは選手が**「受け身」から「能動的」**に、自分のキャリアをデザインする大きなチャンスでもあります。

  • **「バスケのスキル」だけでなく、「ビジネスの知識」**も身につける。
  • **「チームの勝利」だけでなく、「自分の将来」**も考える。

これらの準備を今から始めることで、あなたはサラリーキャップ制という「荒波」を乗りこなし、プロフェッショナルとして、より豊かなキャリアを築くことができるはずです。

もし「どうやって交渉に臨めばいいか分からない」「年俸以外の条件ってどう交渉すればいいの?」といったお悩みがあれば、一人で抱え込まずに、ぜひ一度私にご相談ください。

あなたの夢を現実に変えるための「人生のパートナー」として、全力でサポートできることを心から願っています。


私はJBAのエージェント登録がまだなので… ※「当サイトは、個別の契約交渉や法的アドバイスを行うものではなく、一般的な情報提供を目的としています」 ※あくまで「選手自身が交渉に臨むための知識を身につける」ための情報提供を主体としています。